伝統工芸、4回の炭火焙制を通じ、独特の岩骨、花香を持つ。 肉桂は香辛鋭、耐久性があることで有名。
茶葉の色は青潤で霜がかっており、香りは微かに桂皮のよう。
水色は琥珀、清亮なオレンジレッドで茶湯は美しくまろやか。温めた茶器に茶葉を入れ、蓋を閉めて上下に少し振ってみてください。
蓋を開けると茶器の底から上がってくる、少し熱の加わった茶葉の香りに肉桂独特のスパイシーさがほのかに感じられます。
飲んで少し経つと、身体もぽかぽか。同品種のものを同じ時期に摘んで製茶をしたとしても、まったく同じ味にならないのが農産物の面白いところです。お茶を購入する判断材料として、品種やグレード(等級)に目が行きがちですが、お茶の成長は生育環境によって違いが生じます。
同一品種であっても、日当たり(日陰)、湿度、土壌等により味わいに差異が生れます。
中でも生産量の多い肉桂種は多くの村で生産され、その村の名を織り込んだ特別な名前で呼ばれています。
【店主より―かなり岩茶びいきの「本音」―】
店主が絶海の孤島に一種類だけ茶葉を持ち込んでいいといわれれば、迷うことなく岩茶を選びます。火のおこし方?それはおいおい考えることにして・・・とにかく何が何でも岩茶なのです!山登りにもよく行きますが、限られた荷物に必ず入れておくのが、やはり数グラムの岩茶。あれこれ迷っても、結局落ち着くのは岩茶なのです。
【岩茶の魅力とは?】
あくまで個人的な意見ですが・・・烏龍茶の中でも岩茶は特別な存在だと思います。他の烏龍茶に比べ香りは控えめでパッとしない印象があります。これは一般的な烏龍茶の尺度で岩茶を評価するからです。
他のお茶は主に鼻や舌でその素晴らしさを実感するものですが、岩茶は少し違います。岩茶は身体全体で感じるものだといえます。
さらに、茶葉にもよりますが、小さな茶壷で淹れますと一回分の茶葉で15煎近く飲めたりします(なかなか経済的)。多くの岩茶は最初の数煎も良いのですが、中盤から特に美味しくなっていくようです。この煎ごとの変化も魅力ですし、個人的には徐々に透明感が増して、トロリとなっていく感じが堪らないのです。
私は半日〜丸一日使って、小さな茶杯でチビリチビリとお湯になるまで飲むのが好きです。茶杯にもほんの少しだけ入れコロリと舌の上で転がします。それは一滴、一滴貴重な黄金のしずくを体内に取り込んでいく感覚です。透明感がありますがエキスはとても濃厚です。煎を重ねるごとに、霧が立ち込める幽玄な世界に引き込まれ、時間の感覚も曖昧になっていくことでしょう。つまりリラックス度No.1のお茶でもあるのです。
【他人には言えないけど、こんなシンプルな飲み方も・・・】
あまり格好の良い飲み方でありませんが、中国ではよく見かける美味しくてめちゃくちゃ簡単な方法をご紹介。
必要なものは耐熱性のコップと蓋になるものだけです。
1.まずコップに湯を注しあらかじめ温めておきます(湯は捨てます)。
2.そこにかなり少なめの茶葉を入れます。
3.これに茶葉が踊り出すほどの勢いで熱々の湯を注いで、上から小皿でも厚紙でも良いので蓋をして蒸らします。
4.茶葉が底に沈んで、湯が程よい色になれば飲み頃です(濃さはお好みで)。
この方法ですが、普通の淹れ方と比べて、甘味・エキス感がとても強く感じられるはずです(その代わり、香りはまあまあです)。また、しばらく置いておいても、意外と苦くなりません。お湯がなくなればまた注ぎ足してください。2-3杯は飲むことが出来ます。
※ポイントは100度に近い熱湯と少なめの茶葉です。低い温度では茶葉が沈まず、口に入ってきて飲みづらいです。また、茶葉の量を少なめにするのは、長めの抽出時間で茶湯が濃くなり過ぎないようにするため。そして、数煎分の味を一度に愉しもうと言うわけです。(茶壷で淹れるときは一煎目と二煎目を茶海の中で混ぜ合わせたりしますよね)また、中国では多めに茶葉を入れますが、少なめの茶葉で長く抽出するほうがお勧めです。
以上、拍子抜けするほどシンプルな飲み方ですが、ぜひ一度お試しください。一味違う岩茶の魅力に巡り合えるはずです。
※岩茶の産地である武夷山は1999年に世界遺産に登録され、国家重点自然保護区となっています。