台湾四大銘茶の一つ、
「木柵鉄観音(烏龍茶)」を、安渓鉄観音と比較しながらご紹介します。
鉄観音(品種名も同じ)の代表銘柄は、中国福建省南部の「安渓(アンケイ)」と、台湾北部の「木柵(モクサク)」です。
福建省と台湾は、歴史的に深い関係にあり、福建人によってお茶も伝えられました。
鉄観音は、約300年前に安渓で誕生し、約100年前に台湾へ移植され、
当時の製法「伝統型(焙煎仕上げ)」も、台湾木柵地区へ伝承されました。
その後は、日本統治の影響により、福建省と台湾との関係は途切れ、この二つのお茶の個性が現れ始めることになりました。
木柵鉄観音は伝統製法を守りつつ、新天地の影響も受け、ふたつとない烏龍茶へ進化。
一方の安渓は、伝統型とは真逆の清香型製法へと変わっていきます。
1世紀の間に、其々が全く違う方向へと発展することになりました。
このお茶の重要な工程は、丸く締まった茶葉に、火入れ(焙煎)をしていく作業です。
何度も焙煎コーティングをしながら、内部に残っている水分(成分)に反応・循環させ、熟成環境を整えていきます。
また、価値のある陳年老茶(何年も寝かせる)を作るためには、この工程にすべてがかかっており、長年培われた焙煎師の感が要求されます。
武夷山の岩茶仕上げとはまた違う、鉄観音ならではの熟練の技とセンスが加わったお茶なのです。
その味わいを一言でいうと、
木柵鉄観音は男性的。どっしりと逞しく、且つ優しく奥深いのです。
一方、安渓鉄観音は、とても女性的で洗練された清らかさのなかに、一本筋の通った華を感じます。
飲んだ後にも違いがあり、木柵は身体が温まり、全身がほぐれてくる感覚。安渓はスッキリ目覚める感覚になります。
どちらも、魅力あふれる表現で、茶通の心を捉えて離しません。
さて、今回当店で入荷しました木柵鉄観音は三年陳です。
(三年熟成させたもの)
さっそく、蓋碗に茶葉を入れ、熱湯を注ぎ、タイミングを待ちます。
そっと蓋を開けますと、、、
封印を解かれた重厚な香気が、一斉に立ち昇ります。
水色は、暖かみのある澄んだ橙色。
そっと聞香杯の香りを聞いてみますと、分厚い蜜香が、軽やかに押し寄せてきます。
一口、空気を含みながら喉を通すと、、、
まろやかな焙煎香…
そして、程よい酸味を含む、いちぢくのような果実香がひろがります。
さらに、鉄観音の歴史を物語るような喉韻。最後に鮮やかなまでの、きらめく香りと清涼感が訪れます。
余韻は安渓鉄観音に似ています。
【マメ知識】
烏龍茶誕生(諸説あり):約500年前
烏龍茶製法確立:約300年前
鉄観音(安渓)の誕生:約300年前
台湾へのお茶の伝来:約200年前
台湾への鉄観音の伝来(木柵):約100年前