青茶【烏龍茶/ウーロン茶】とは
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烏龍茶は中国茶の分類上「青茶」と呼ばれています。
この青茶とは「半発酵」の製法で作られた茶の総称です。ですが「半発酵」と一言で言っても、実際には緑茶に近い軽発酵(約15%)からきわめて紅茶に近い発酵(約70%)まで様々であります。
またさらに、この発酵に焙煎 (重火・中火・軽火)の要素も加わるので、青茶(=烏龍茶)は多種多様です。
味わいの特徴も緑茶と紅茶の中間帯に属し、それぞれのお茶によって緑茶のような清らかな香りのものから紅茶の濃くて豊かな味わいに近いものまで様々です。また焙煎の強いものには炭焼きコーヒーのような風味を持つものまであります。
現在、青茶の数ははっきりとはした数字は出されていませんが、数え切れないほどの相当数に上るようです。
ちなみに中国で最も生産量・消費量の多いお茶は緑茶であり、中国の日常に必要不可欠のものとなっている。いわば緑茶が中国茶の代表選手といえます。
しかし、青茶も負けてはいません。特有の花や果実を思わせるような香りは格別ですし、ファンの層も世界的に厚い、また製茶方法や喫茶方法も徹底的に研究されているからです。オークションやコンテストなども主に青茶を対象にしているものが多いです。このようなことから青茶も中国茶の花形選手であるといえるのではないでしょうか。
「烏龍茶」と言う名前の由来は、「烏龍」という名の茶農が開発したから「烏龍茶」だとか、烏のように黒く龍のような形をしているお茶だからと種々あり、はっきりしていません。
しかし、おそらく青茶の製法のルーツは、福建省の武夷山から始まったのではないでしょうか*。歴史は意外に新しく、明代中期に福建省武夷地区から誕生したと考えられています。(紅茶も同じく明代に武夷から生まれたという説があります) 言い伝えによると、竹籠の中で太陽に晒された茶葉が運ばれるうちに籠の揺れで擦れて酸化し、目的地に着いた頃には偶然美味しいお茶(烏龍茶)になっていたことが始まりなんだそうです。こうして青茶の製法が発見され、茶農の間で徐々に開発されたのだという説が広まっています。
清代には青茶の製法が確立され、その後にこの製法が福建省南部の安渓、広東省潮州、台湾に伝わりました。ここで現在の四大中国茶(武夷岩茶、安渓鉄観音、鳳凰単叢、台湾茶)産地の最初の基礎ができたといえます。その後、各地でその地に合った青茶の製茶方法が作り出されて特色のある銘茶が誕生していきました。
こうして各地で根付いたお茶は次第に重要な産業となり、アヘン戦争の頃までは中国大陸から、その後しばらくはもっぱら台湾からヨーロッパへと茶葉が輸出されます。そして輸出先の国々で金持ちや貴族に愛飲された。多くの逸話の残る東方美人茶(Oriental Beauty)もこの過程で世界的に有名になったのです。
と、以上がかなり大雑把な近代までの青茶史です。
*青茶のルーツは武夷山以外に潮州説もあるので注意。
四大烏龍茶の産地と代表的烏龍茶は以下の通りです。
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鳳凰山系の山から。
-青茶の基本的な製造工程-
@摘採⇒A萎凋⇒B揺青⇒C殺青⇒D揉捻
⇒E乾燥⇒F焙煎
@摘採:茶葉を摘むこと。手摘みと機械摘みがあります。
A萎凋(いちょう):摘んだ葉を日光に当てる。香りを出す為の工程(この時少し発酵させる)。
B揺青(ヤオチン):茶葉を揺らしながら葉に擦傷をつけてさらに酸化(発酵)を進める。
C殺青(さっせい):加熱で酸化(発酵)を止める。烏龍茶の水色と味の決まりどころ。
D揉捻(じゅうねん):形を作る。丸くするか細長くするか茶葉の味と香りが最大に引き出される様に考えられた形状に形成される。
E乾燥:乾燥機によって余分な水分を取り除く作業。水分量5%以下にするのが理想的であると言う。
F焙煎:仕上げに火入れをして風味や最終的な水分量の調整をする。焙煎の強さによって「重火・中火・軽火」などと表現される。
以上が烏龍茶の基本的な製造工程であるが、生産地や製茶業者によって多少の違いがあるので注意。
*@〜Eは茶農で一貫して行なわれる場合が多い。Fは茶商が独自に行なう場合もある。またEがFも兼ねる場合もある。
揺青工程の様子。
一般的に言われている茶葉の鑑定ポイントは以下の通りです。(あくまでも目安)
- 【茶葉】
- ・全体的に茶葉の形・色が均等で整っているものが良い。
- ・上質な茶葉は水色と味に透明感がある。
- ・茶葉の発酵部分(紅色)と不発酵部分のバランスが良い。
- ・良い茶殻は潤いと光沢があり柔らかい。(悪い茶葉は枯れたようにガサガサして硬い。)
- ・厚みがある茶葉。(旨み成分の少ない夏茶や低海抜の茶は一般的に薄い。)
- ・産毛がある茶葉。
- ・良い茶葉には潤いと光沢があり形も整っている。(悪い茶葉は枯れた色をしている。)
- ・良い品質のものは必ず手摘みで形も整っている。(機械摘みでは余計な茶葉まで混入する。)
- 【環境】
- ・基本は厳しい環境で育てること。(過度の肥料や管理は逆に茶葉の旨みを減少させる。)
- ・水はけが良い傾斜地。
- ・近くに川や湖があって昼夜の気温差が大きいこと(霧の要因)。
- ・標高が高いこと。
- ・樹が若いこと。(香りや旨みが強い。種類によっては老樹が好まれる場合も。)
- 【季節】
烏龍茶は基本的に春のお茶が最も香りが高く品質が良い。続いて味わい深い秋のお茶が良いとされています。
また最近は冬のお茶も注目され、冬茶・冬片・雪片などと呼ばれていますが、香りはそこそこである分、甘みや旨みにおいて優れています。
夏茶は苦味が多く、旨み、香りが少ないようです。要は冬から遠ざかるほど旨みが落ちていくのですね。
(注)上記はあくまでも目安。上記項目に当てはまらない茶葉でも良い茶葉はあります。
烏龍茶の飲み方には様々な方法があります。ここでは茶芸(工夫茶)的な堅苦しい(芸術的要素を含んだ)方法は省きます。中国で日常的に行われている実用的な方法をご紹介していきます。
@急須(紫砂壺など)を熱湯で温めて湯を捨てる。
A茶葉を急須に適量入れる(急須の底が隠れる程度)。
B沸騰したお湯を注いで約一分間蒸らす。(時間は茶葉によって違う。二煎目以降も時間に調整が必要)
C茶海と茶杯に熱湯を注ぎ温めておく。
D急須から茶湯を茶海に最後の一滴まで移して各茶杯に注ぐ。
<ポイント>
なるべく高温で淹れることを心がけると良い。中国ではお茶の香りに重点をおく為沸騰した熱湯(100度)で淹れている。
日本茶(緑茶)のようにやや低めの温度で淹れると甘味を感じやすくなる。
味わいに物足りなさを感じれば、茶葉の量を増やしたり、時間を長めにおく、などの調節をする。茶葉それぞれに特徴が違うので、まずは1煎で様子を見る。2煎目以降はこれに調整を加えながら淹れていく。
使用する茶器は紫砂茶壷や蓋碗がお薦め。初心者や簡単に淹れたい方には「飄逸杯」なるものも最近登場している。
なお使用する水に関しては軟水が良いとされている。水道水でも浄水器を使うか、しばらく沸騰させてから使うと良い。
お茶の風味は茶葉自体の質・茶器(材質や形状)・温度・抽出時間・水質など様々な要因で決まるので、色々と工夫しながらお試し下さい。
基本的には、直射日光に当たらない風通しの良い涼しいところに密閉状態で保管するのがベストです。 カビが発生しやすい多湿環境での保管は特に避けましょう。 保管環境や容器によって匂い移りがありますので気をつけて下さい。
夏季の保管
夏場には最適な環境を確保するのが難しいものですが、やはり日が差さず、風が良く通る涼しいところに保管するのがベストです。 しかし、このような最適な保管条件が整わない場合は密閉容器に入れて冷蔵庫での保管をお勧めします。 (注:冷蔵庫内の匂いをお茶が吸収して風味が損なわれないように注意してください。)